眼医器協コンプライアンス委員会の取り組みについて

一般社団法人 日本眼科医療機器協会 
コンプライアンス委員会 委員長
守口 茂登志
常任理事 守口 茂登志 参天製薬株式会社 日本事業戦略企画統括部 事業推進・人材開発グループ主管

 

2022年5月に報道された眼科領域におけるコンプライアンス不適切事案について、当協会コンプライアンス委員会の約半年にわたる対応と、今後の取り組みについて述べたいと思います。

5/14 NHKニュースによる報道、及び公取協との連携

 この日、当協会会員企業による手術動画提供依頼と現金提供が販売促進を目的として医師個人に行われ、患者様の個人情報管理の点でも問題があった旨が報道されました。これにより本事案を知った当委員会は、まず手術動画の適正な収集方法について医療機器業公正取引協議会(以下「公取協」)に連絡を取りました。そして、公取協の定める医療機器業公正競争規約(以下「規約」)によって以下のとおりであることを確認しました。

  • 適切な手順のもと関連する運用基準やルールを遵守する
  • 製品の適正使用等の情報提供を目的とする
  • 報酬は社会通念上相当額とする

 一方で、本事案は目的、不当な取引誘引、報酬の妥当性など、いくつかのポイントが規約等に抵触するのではと推測しました。(この時点では公取協が当該企業へ調査中であり、判断は出ていませんでした)

6/6 緊急注意喚起の発出

 次に、公取協支部委員メンバーを中心としたワーキンググループ(以下「WG」)を立ち上げ、公取協の指導を受けながら今直ぐに出来る再発防止策を議論しました。そして6月6日、日本眼科医療機器協会会長名にて「緊急注意喚起:医療機器使用に関する動画等提供依頼時の注意点について」を発出いたしました(添付参照)。これにより、業務委託の際には契約書を適切に取り交わすこと、医療機器の採用や使用等を不当に誘引してはならないこと等を、改めて会員企業にお伝えしました。

7/13 公取協による「厳重警告」措置

 その後公取協は7月13日、本事案が動画提供を名目とした自社の医療機器の購入を不当に誘引する手段としての金銭提供であり、極めて重い「厳重警告」の措置をとったことを公表しました。規約第4条第1号又は第2号に該当し、「医療機関等に対し医療機器の取引を不当に誘引する手段として景品類の提供をしてはならない」の規約第3条に違反すると判断したとのことです。
近年、重大な規約違反事案が複数発生したことを受け、公取協から2021年3月24日付で「公正競争規約のより一層の遵守徹底について」と題した緊急メッセージが発出されていました。それにも拘らず当協会内において重大な違反事例が発生したことを深刻に受け止め、同日、当該企業へ具体的な改善案の提示と再発防止を依頼すると共に、支援と協力を申し出ました。

8/10 注意喚起メッセージの配信

 同時に改めてWGにて再発防止策の検討を重ね、8月10日、コンプライアンス委員会より会員企業あてに「注意喚起メッセージ」を配信いたしました(添付参照)。当該企業では動画収集だけでなくPMSも販促目的で行われていたことが明らかとなったため、会員企業には例えば「企業独自に行う調査」等が下記通知に従い適切に行われているかの確認をお願いしました。

公取協発第2640号(平成28年11月1日)「『企業が独自に行う調査』として症例報告を実施する際の留意点」
また、これに関連する資料として会員企業は是非こちらもご参照ください。
公取協NEWS第70号:規約解説のポイント「『企業が独自に行う調査』として症例報告を実施する際の留意点について」

9/9 理事会/総会での報告
10/5 メッセージの配信

 一か月後の9月9日に開催された当協会の理事会/ 総会においては、ここまでの本委員会の対応を報告し、改めてコンプライアンスの重要性を各企業内で確認するようお願いしたところです。

 また、当委員会では継続的なメッセージ配信によって、会員企業のみなさんの理解を深めて頂くことが重要であると認識しています。その一環として、10月5日には「コンプライアンスの一層の強化のために」(添付参照)を配信しました。なお、この時期には公取協による全国規約説明会や医療機器産業連合会(以下「医機連」)による企業倫理セミナーも行われています。

2023年度の予定

 当委員会では、2023年度の事業計画&年間スケジュールについて協議し、公取協や医機連と連携して次のことなどの実施を決めています。

  • 規約インストラクター研修等の各種コンプライアンス研修の継続提供
  • 規約理解のためのメッセージ配信の強化
  • 規約の解釈が不明な場合の事前相談受付
  • 委員の募集強化
  • 事例提示

 また、10月から当該企業の方々にも参加頂いており、改善計画に基づいて委員会として支援していくことも確認しています。

 コンプライアンスへの正しい取り組みは、大切な企業基盤を創り上げることにつながります。そのプロセスにおいて会員メンバー、会員企業が健全に成長していくことで、医療および患者様へ、より一層の貢献ができるものと考えます。

 また、患者様の個人情報の取り扱いなど、医療、患者様への貢献の取り組みの中で存在しうる課題等については、患者様の健康増進を第一に考え解決に取り組んでいきたいと考えます。医療機関等、医療担当者等の皆様には引き続きご指導いただければ幸いです。